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ドクター&ナースのつぶやき

令和7年10月号

認知症と共に生きる方に寄り添う看護


直方鞍手医師会訪問看護ステーション

藤田 沙也加      


 はじめまして。今年1月より直方鞍手医師会訪問看護ステーションの管理者をさせていただいております、藤田 沙也加と申します。
現在の勤務先は看護学生の時にお世話になった実習先であり、また、同じ施設内に母校があるという不思議な感覚もあり、このご縁に喜びを感じます。
訪問看護は初めてで、利用者様の生活の場に直接関わるといった環境での看護について学びも多く、日々様々な体験を通して成長させていただいています。
今回は認知症についてのテーマで考える機会を頂きました。 


訪問看護で認知症の方と向き合うとき、私が大切にしているのは「その人らしさを尊重すること」です。認知症が進むと、記憶や判断力に変化が現れ、言葉で思いを伝えることが難しくなることもあります。しかし、長い人生の中で積み重ねてきた習慣や価値観は、たとえ言葉で語られなくても日常の仕草や表情に残っています。そこに目を向け、受け止めることが看護の出発点だと感じています。 

また、言葉だけに頼らず、非言語的な関わりを大切にすることも欠かせません。声の調子や眼差し、手をそっと添える仕草など、穏やかな関わりは不安を和らげる力を持っています。繰り返し訪問し、同じ挨拶や何気ない会話を重ねることで、少しずつ安心が生まれ、信頼関係へとつながっていきます。

訪問看護は医療的な支援だけではなく、ご本人の「できること」を支え、家族の思いを受け止める役割も担っています。地域でその人らしく暮らし続けられるように支えることこそ、訪問看護の大きな使命だと感じています。認知症とともに生きる方への日常に寄り添い、小さな安定や温かさを守ることが、看護師としての私の願いです。

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