ドクター&ナースのつぶやき


令和5年10月号 

  どこからが、ハラスメント?

飯塚医師会訪問看護ステーション 

管理者 髙田 ゆかり


 こんにちは。

 当事業所は飯塚市中心に位置しており、豊富な経験年数をもつ5名の看護師と2名の理学療法士が在籍しており、親切、丁寧、安心をモットーに地域医療に取り組んでおります。

この度は暴力とハラスメントをテーマに「ドクター&ナースのつぶやき」の執筆の機会を頂きましてありがとうございます。私は、令和5年度より管理者として就任しスタートを切ったばかりです。そんな私がこの場で「つぶやく」など大変恐縮しております。

世間一般的に言われている暴力・ハラスメントと医療の現場でのハラスメントは同類とは考えにくい部分があるのではと思われます。特に訪問看護の現場では断定的にそう表現していいのか?グレーな場面があるように思います。

スタッフとの日々の会話で聞こえてくるのが、60才代の男性利用者様のケースです。脳血管疾患もあり、リエゾン科にも通院されている、独居で身寄りがなく、室内車いす生活で介護事業所等の利用なしでは生活できない方です。

ある一定年齢以上の看護師が訪問すると「ばあさん、なんで来たん?ばあさん来んでいいといったやろ?」「あの若い女にして、あの女やったらいい。」と言われ、ステーションへ電話をかけ看護師の指名をしてこられる。言われようによっては看護師も人間ですから、傷つき、悔しい思いをすることもあります。それでもこの方のために役に立てたらと、スタッフ間で話し合い、一定の看護師に偏ることなく数名で訪問を分担し、何か言われたら毅然とした態度を取り注意する、といった対応をしております。しかし、どの訪問時のスタッフに対して胸元のボールペンを取ろうとしたり、唾液を看護師の手に付けようとします。また、カバンの中のものを手に取り「これもらった」と握って離さない。注意すると一定のスタッフに対しては「この馬鹿が!」と言われ、そんなこんなに対応していると往々にして訪問時間延長してしまいます。

この利用者様の言動は世間一般的にみるとセクハラ、モラハラとなるところ。しかし、医療現場の観点からはその背景や疾患等が絡まると、ハラスメントとして大きな声をあげていいのか?いや、声を上げる事はタブーなのでは?この事例をハラスメントとしてあげることこそ自責の念に駆られます。

こんなケースもあれば、他利用者様訪問時に「家ではどんな片付けをしているの?」と嫌味なことを言われたり、「電話番号教えて!」強要されたり、「看護師のくせにこんなこともできないのか?」と罵声を浴びせられ、現場はさまざまです。

体験談を聞くだけなら冷静なアドバイスが出きるだろうと思います。しかし現場は、その瞬間、相手の咄嗟な発言に動じず、適切な言葉や態度で対応することが望ましいとわかっていても、なかなか思い通りにいきません。こちらに非がないことでもついつい「すみません」と、言ってしまうのが現状であり、そんな対応に困る案件は日常茶飯事です。

世間の常識では問題視されるハラスメントの言動。そこに疾患やその方の置かれている背景、病気と闘う思い、家族の心情、希望、期待などいろいろなことが絡んでいるとその世間常識は覆り、在宅常識と化するのであろうか?それが現場の現状ではないかと思います。

確かに、そこまで問題視する事柄か?と思われる方もいれば、問題に対し、何気なくかわし、対応できる方もおられます。身体的暴力、ハラスメントは目に見える防御方法がある、しかし目に見えない精神的な暴力、ハラスメントは、受け止め方にもよりますが、心のダメージの強弱は人それぞれで、完全解決は難しいと思います。

 そこは看護師の腕の見せ所?経験値が物を言う?

 これは、正しい答えってあるのでしょうか?

  みなさんの周りではここでいうグレーな案件はございませんか?また、前述事例でみなさんがその場におられたらどう対策を考えられますか?

また、自分にとって、これはハラスメントに遭遇したと思われますか?それとも問題とは言い難いと思われますか?

医療の現場、在宅の現場では何がハラスメントで、何がハラスメントにならないのでしょうか?賛否両論かと・・・。

この「つぶやき」が、また違った観点から見た現場ハラスメント対策について考えていただくきっかけになれば、と思います。

当ステーションもスタッフで話し合い、だれでもできる対策方法を見出せたらいいな、と考えております。

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