ドクター&ナースのつぶやき
令和5年8月号
カスタマーハラスメントの現状
訪問看護ステーション笑顔・ネット
森園 果梨心
開業8年も過ぎ、振り返るとあれやこれやとカスタマーハラスメントのような事例を思い浮かべる。どのように対応してきたか、これからどう対応していくか、小さな訪問看護ステーションの現場での出来事を①~④の事例を紹介して、考えてみる。
①鬱の70代女性。
元々の性格かとにかく細々とした口頭指示をして思い通りにならないと「はよして」「何しようと」と怒鳴り散らします。言葉を正すと、悪いという認識はあり、弁解のように「自分の性格だから」と弁明。終了時には「ありがとう、来てもらわないと困る」と言う。経験豊富なスタッフでさえ会話傾聴ではストレスが多く困難な事例であるため、管理者が断続的だが、継続して訪問している。教育的介入と馴染みの関係の中で、年齢もあるのか、トーンダウンもしてきており、当初は困難だった、訪問診療、ヘルパー等の他職種の導入も可能となった。しかし未だケアにストレスを感じる事もあり、撤退を考えたりするが続けている。
②男性91歳。
気に入ったスタッフへの馴れ馴れしい発言。時に身体的接触を求めるようなセクハラとも受け取れる発言があり、その都度サービス継続が困難になる事があり、他のステーションに変更になる事を伝える事で、そのうち言われなくなり、最後の日までケアを問題なく行えた。
③コロナ禍の始まった3月頃、三年近く訪問していた92歳女性。
入浴時の体温にて37.3度あり、便コントロール不良で摘便等処置を考慮して同居の娘様へ熱がある事を伝えた時「コロナを持ち込むのはあなた達だけですからね」とスタッフの目を見据えて言われた。全世界がコロナという感染症にナーバスになっている時期であり、もちろん我々も微熱という段階でコロナへの懸念もあり敏感になっている時期でもあった。翌日に在宅医、ケアマネへ撤退を伝え了解を得た。撤退の理由は「コロナのため、訪問を止める」と言う事でご家族、ご本人様にも了解を得た。
④ターミナル期70代女性。
癌治療で入院加療していた。入院先の病院での様々な対応に対する不満を盛んに訴えられていた。在宅整備も整い8カ月近く増悪もなく経過したため、月に2回の30分訪問を続けていた。その中で徐々にスタッフに対して細かいことに「ありえない」や「やる気あるの」と高圧的な言動が目立つようになった。都度対応していたが担当医から、関係性がよくないとの事でステーションの交代を許可され交代した。
③、④事例については、看護本来の姿と捉えるなら、患者家族の思いを傾聴するべきではなかったかと、撤退した今も考える事がある。
訪問は、家族という閉鎖した対象者とのエリアに入る専門性を仕事とする。その為、病院と違いお互いの相性等も大きく影響する、結果として良好な関係が出来ない場合も含め理不尽な事も起こりやすい現場であると言う事である。最近では、契約の際に当ステーションが合わない場合、お互い解除もある事を伝え、その際は迷わないようにして欲しい事、次のステーションも紹介出来る事を特に付け加えて説明している。しかしながら、こうした私の対応を私の尊敬する先輩方々やナイチンゲールはどう評価されるのか。やはり相手は健康を害した患者であるのに。