ドクター&ナースのつぶやき

令和4年12月号

BCPの作成や人材育成の取り組みについて

訪問看護ステーション誠愛 荒武 裕子


訪問中、街路樹に目をやると、黄色や紅色に色づき始めた今日この頃です。日々バタバタと多忙な毎日を過ごしていても、肌で季節を感じ、ふと心が癒されるそんな瞬間が味わえる訪問看護の仕事は幸せだなと思います。

当事業所は、看護師8名、作業療法士4名、理学療法士5名、看護補助者2名、事務職1名で運営しています。
お互い連携しながら、利用者個々にとってのQOLとは何かを追求し、地域で選ばれるステーションを目指し日々努力しています。

今回、このようなテーマを頂き、まだまだBCP作成も完成しておらず、私が語れるようなことはあまり無いのですが、これまで行ってきた災害対策のことも含めながら書かせていただきます。

BCP作成にあたり、BCPがどんなものなのか管理者が把握するのはもちろんですが、管理者だけが作成するのでは意味がないと考えます。スタッフと共有することでそれを理解し、シミュレーションすることで有事には行動できるものと考えています。
とは言え、日々の業務で多忙な中、多くの時間をBCP作成に費やすことは困難です。
そのため、少しずつ積み重ねていく必要があります。

平成25年から事業所内で災害対策委員をつくり、委員を中心に災害対策マニュアル作成や職員間での災害時を想定した訓練を行ってきました。しかし、当初は利用者の状況を個々に想定したものにはなっていませんでした。平成29年からは、実際に災害時に動ける個別支援計画をたてることを目標に、医療依存度の高い利用者から順に年に1例ずつ個別支援計画をたて避難訓練を行ってきました。(他の利用者も支援計画は受け持ちが立てます。)
1例目は、マンションの2階に住み常時呼吸器装着・経管栄養・ADLは全介助のAさん、地震で停電エレベーターが止まったと想定し、関わる事業所に声をかけ訓練を行いました。
階段で降りることになるため介護者1人での避難は難しく、自発呼吸はないため強制的な換気を絶やすことはできません。大人3人は必要ですが、近所に手伝ってくれる人もいません。大きなバギーは呼吸器をのせたままの移動は可能ですが、重量があり、その上階段が狭くうまくカーブを曲がれません。何を使って安全に降りるのか、スタッフの知恵を出し合い介護者の協力のもと最終的には布製の担架を作製しました。実際に訓練を行うと色々な問題が浮き彫りになりました。災害の際には、私達自身の状況も必ず動けるとは限らず、できるだけ家族や近所の方の協力を得るなど自助を第一に家族にも日常から意識してもらうことが大切だと思います。しかし、業務継続できる場合、または再開した場合、生命に直結するケースに関して利用者の安全を守るための対策が最も重要であることから、状況によっては、救助に向かう必要のある優先度としては、このケースは上位になってきます。
この訓練を通してスタッフの意識を高めること、家族の意識を高めることができ、課題も見え、なにを優先すべきかを考える行程が、BCP作成の際にも役に立っていると思います。コロナ禍で、途中実施できない年もありましたが、これまでに計5名の訓練を行いました。
昨年度は陽性者の少ない時期をみて、保健所、市役所も加わり、実りあるものとなりました。その度に新たな課題ができ、スタッフの学びとなりました。
スタッフと共に経験し共に考えることが、互いを理解し、コミュニケーションが生まれます。BCPに関わらず、人材育成をする上でも大切なことだと考えます。

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