ドクター&ナースのつぶやき

令和5年1月号

人材を確保・定着のための人材育成について

医療法人ふらて会訪問看護ステーションふらて 石松 香織


 看護者は常に個人の責任として継続学習による能力の維持・開発に努める―

 これは、日本看護協会の「看護者の倫理綱領」第8条に記載してある言葉です。私たち看護師は、専門職業人としての能力の維持・開発に努めることが、自らの責任なのだと書かれています。今回、お話をいただき改めて「倫理綱領」を読み返してみました。

 初めまして。当ステーションは、令指定都市の中でも群を抜いた高齢化率、北九州市八幡東区に位置します。正社員6名・パート職員1名で全員が4年目~10年目と比較的長期勤務者で構成されており、登録者数110名前後の利用者様の訪問に日々奮闘しております。ただ、長期勤務者が多いと同時にプラチナ世代も増えてきているという現状。今後起こりえる、世代交代・マンパワー不足の潜在的問題を抱えています。

 厚生労働省によると、2020年末時点で訪問看護ステーション就業率は全体の4.9%。年々増加傾向ではあります。しかし、2025年を目途に訪問看護師を約15万人まで増やすことを加味すれば、域包括ケアシステムの要としては心もとない数字です。訪問看護師を増やし、サービスの質を高める為にも、新任者を含めた職員の学習はより一層必要と考えます。

 当ステーションは一昨年、JNAラダーを基に、地域性や職員の力量に合わせオリジナルのラダーを作成しました。まずラダーの勉強会を行い、スタッフ全員が訪問看護師としての自己のレベルを確認するところからのスタート・・・と考えていた矢先のコロナ禍での業務のひっ迫。結局は、「日々の業務が忙しい」を理由に全く取り組むに至っていないという現状です。

 ラダーを導入する際は職員の合意が必ずいると考えます。必要性を理解しないと、導入したとしても風化していくことになりかねません。その為に管理者として、ラダーの必要性、目的を充分説明できる能力と共に、職員の反応を見ながら見直し・調整をしていく柔軟性が求められる。そう改めて感じている次第です。「地域の看護師」として常に社会的動向を見ながら学習を継続していかなければなりません。

 ラダーは、職員が自身のケアキャリアを内観し、自己の課題を抽出し学習を深めていく事が出来るツールです。と同時に、社会的責任を果たせているかどうかの指標でもあるのではないかと考えます。

訪問看護師は一人で利用者宅を訪問する為、自己の判断やケアが適切なのか?という状況は日々の実践現場で頻回に直面している事でもあると思います。管理者も、目の前の業務をこなすのに精一杯です。だからといって、事業所が掲げた目標に向かって全員が同じ方向をむいているのか?その評価をおろそかにすることはできません。スタッフ一人ひとりの教育をそのレベルに応じて段階的に行っていく為にも、やはりラダーは価値あるものといえます。

 その為にも、まずは実践。コロナ禍がようやくひと段落してきた今、放置されていたラダーを活用し、まずはスタッフ全員がシートで自己チェックをしていく。そして、自らのレベルの確認をし、そこから課題を見つけ、業務の改善に繋げていく。単に〝仕事ができる人〟を育てるのではなく、「ウチのステーションはこんなステーションである事が目標。なので、その為にはこんな人材に育ってほしい」という観点で考えたとき、そこがスタッフとベクトルが同じである必要があると私は考えます。そして、定期的に学習の機会を作り組織としても成長していきたいと考えています。

 最後に・・・有名な格言の中に人材育成のヒントがありました!

やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば、人は動かじ。

話合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。

やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。】

                      山本 五十六

有難うございました。




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