ドクター&ナースのつぶやき

令和7年8月号

認知症

Bloom訪問看護ステーション 

  管理者 谷口恒太   

 私たちが日常的に使う「拒否」という言葉には、医療やケアを“進めたい側”の視点が強く表れています。認知症の方が治療やケアを望まなかったとき、その選択を「拒否」と捉えることで、知らず知らずのうちに本人の意思を否定してしまっているのではないでしょうか。

 想像してみてください。知らない人が突然自宅に来て、「お風呂に入りましょう」「薬を飲みましょう」R7.8月.jpgと促される。その声かけに従わなかったとして、それを「拒否」と呼ばれることに、もし逆の立場だったら納得いかないと思います。

 本当に「拒否」なのか、それとも自然な“選択”なのか。そこを丁寧に見極めるためには、専門職としてのアセスメントが欠かせません。なぜそう感じるのか、何か背景があるのかを探り、説明を尽くしたうえでなお希望しないのであれば、それは尊重されるべき“本人の意思”です。認知症があるからといって、その考えを軽視してよい理由にはなりません。

 色々な拒否があるときには、他の支援者と連携しながらケアの方針を共有し、みんなで今より少しでも良い状態を一緒に作っていく。このような緩やかな関係性の積み重ねこそが、認知症の方への支援では大切だと考えます。関わる私たちの主語を“本人”に置き換え、できることを一緒に見つけていく姿勢が、信頼関係を築き、本質的なケアへとつながっていくのではないでしょうか。






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