ドクター&ナースのつぶやき
令和5年3月号
認知症ケアについて改めて考える
大川三潴訪問看護ステーション 田中 直子
今回のテーマが「認知症ケアについて」ということで、私なりの思いをつぶやいてみました。
皆さん一緒だと思いますが、訪問看護で認知症ケアを求められる事は多々あります。当ステーション利用者さんは認知症に関連した診断名のつく方が全体の3割ほどで、独居の方もおられます。訪問看護は限られている時間内で、病状や生活状態を正確に把握・分析して適切な支援を提供できるかを求められますが、認知症の方の中にはご自分の思いをうまく表現することが難しい方もおられ、ケアする側になかなか伝わりづらい時があります。そのようなことが続くと不安や不満が強くなり中核症状の悪化や時には周辺症状(BPSD)が現れるといったことも考えられます。「何を希望されているのか」「不安の原因は何か」と多角的に推測して対応する必要があり、その為には普段から認知症の方を理解し、思いや訴えを傾聴して信頼関係を築いておかなくてはいけません。決して不安や不満を与えない関わり方を常に意識しておくことが大切だと思います。
余談ですが、認知症をもつ高齢者に対応するために「ニューオレンジプラン」があります。基本原則は「認知症の患者ができるだけ身近な環境に住むことが出来る社会を創造する」というもので、特に一人暮らしの認知症の方の為の効果的な戦略が必要と言われています。「認知症高齢者等にやさしい地域づくり」を7つの柱に沿って推進していく中に、「認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供」というものがあり、そこに「早期診断・早期対応のための体制整備」として各市町村に認知症初期集中支援チームが設置されています。このチームは医療・介護の専門職から構成されており、家族等から相談を受け認知症が疑われる人や認知症の人およびその家族を訪問後、必要な医療や介護の導入・調整や家族支援などの初期の支援を包括的、集中的に行い自立生活のサポートを行います。私もこのチームに参加させていただき、6年程活動しておりますが、日頃のケアプランに基づいた訪問とは違い門前払いや面会拒否をされながらも何度も訪問し、思いや訴えを傾聴し信頼関係を築いて初めて支援が開始されるといった状況です。それでも最終的に診断名がつき適切な医療や介護支援へつなげることが出来たときは普段の訪問看護とはまた違った思いを持つことが出来ます。
高齢化が進んでいる今日、在宅で過ごす認知症の方もますます増えていくことでしょう。
認知症の方に限らずどのような病気であっても、住み慣れた自宅や地域でその人らしく過ごせるように支援を続けていければと思います。