ドクター&ナースのつぶやき
令和6年6月号
在宅の看取りについて
嘉麻赤十字訪問看護ステーション 森山 英美
みなさんこんにちは。
嘉麻赤十字訪問看護ステーションは、平成12年に開設した、病院併設の事業所です。嘉麻市は高齢化率41%を超え、福岡県で7番目に超高齢化が進んでいる市町村です。その中で、利用者、家族に寄り添い、希望される在宅療養の実現を目指し、サービス提供に努めています。スタッフは看護師6名とリハビリセラピスト2名です。
今回在宅の看取りについて、実施していること、考えていることを書かせていただきたいと思います。嘉麻赤十字訪問看護ステーションでは令和5年度、ターミナル期の利用者さん20名、そのうち4名が在宅の看取りとなりました。ここ数年の傾向として「意識があるあいだは」「体が動くうちは」「症状がひどくないあいだは」と希望された状態ぎりぎりまで在宅療養をされて、入院される方が多くなっているように思います。看取りの方も、最初から強く在宅の看取りを希望される方、在宅療養の経過の中で看取りとなる方と様々です。在宅の看取りが目的ではなく、どう最期まで生きたいかを利用者さんが考え実現できるように、意思決定支援を繰り返していくことが重要と考えています。私たちが意思決定支援を行うときに大切にしていることは、「気持ちは変わっていい」ということを理解していただくことです。そして、自分達で決めていただくということです。命の瀬戸際にいる利用者さん、それを支えるご家族は不安で胸が押しつぶされそうなお気持ちで日々生活されています。その精神的負担を少しでも軽くできるよう、その時その時の揺れるお気持ちを受け止め、状態に必要な情報を共有し、一緒に悩み、考え決めていただいています。
また、在宅の看取りの実現には介護者支援が鍵となると考えます。勤務されていたり、高齢であったり様々な背景があります。その状況に合わせて介護負担軽減を図り、利用者との関わりにご家族が注力できる環境を調整することも、訪問看護師の役割だと思います。介護負担に関しては、定期巡回随時訪問型訪問介護看護のヘルパーとの協働で、在宅療養の限界点を高めることができると考えます。ご家族の代わりに1日頻回の訪問で身体介護の支援、体調不良や転倒等の有事の随時訪問が24時間可能であり、夜間は訪問看護師より早く駆け付けることが可能です。そこで連携を図りながら、緊急時の対応やニーズに即応しています。利用者さんの小さな体や心の変化も頻回の訪問で早目にキャッチし協働で対応できることで、利用者さん、家族の不安を軽減でき、安心に繋がり喜ばれています。
在宅の看取りは同じ経過はなく、ひとりひとりのかけがえのない人生最期の時期に関われることはとても光栄なことだと思います。ご家族を看取るということはつらく、心残りや後悔が全くない人はいません。でも、最期の時間までしっかり利用者さんと安心して過ごすことで、自分の利用者さんへの介護に対し肯定感が生まれ、死を受け入れることができるようになると感じています。この「自分は十分介護できた」という肯定感が、その後のご家族の自信となり、もとの生活に戻ることができた事例が多くあります。私たちは、人生の最期に関わらせていただくことに感謝しながら、これからも利用者さん、ご家族の思いに耳を傾け、日々の関わりを大切にして支援していきたいと思います。