ドクター&ナースのつぶやき
令和4年8月号
こんにちは、筑紫医師会立訪問看護ステーションです (^▽^)/
筑紫医師会立訪問看護ステーション 長尾 靖子
始めまして 筑紫医師会訪問看護ステーションの管理者・長尾と申します。
この度 呟きの投稿依頼を拝受いたしました、有難うございます。
筑紫医師会立訪問看護ステーションの歴史はH11年介護保険制度とともに発足しておりますが、当初の理念を引き継ぎ現在も尚『高齢者が尊厳を持ち暮らし続ける社会の実現を目指し』、『地域包括システムの構築に寄与する』ことに活動しております。
メンバーは 看護職員13人(保健師2名、看護師11名)セラピスト5名(PT2名,OT2名,ST1名)、歯科衛生士1名、事務職2名の総勢21人が屋台骨となっています(パート3名含む)。
≪24時間・365日の看護≫をスローガンにしていますが、昨今の働き方改革も重視しつつ、働きやすい職場つくりを目指しています(とはいえ スタッフの満足度は計り知れません)。
筑紫地区には現在53の訪問看護事業所が存在します。6年前から始まった県委託訪問看護連携強化事業・交流会では、筑紫医師会々員の先生方の協力も得て、訪問看護職にとどまらず地域の病院の医師や看護師、在宅担当の医師や看護師、あるいは連携室SW、ケアマネジャーやリハビリスタッフとの意見交換会等、2年前からはいち早くzoomミーティングによる COVIT19の情報、withコロナの活動などをテーマに交流会を開催し、地域の連携やネットワークの重要性を話し合う機会でもありました。この強化事業を機に連携は深まったと感じています。今後もより深め、近々の課題であるBCPやSDGSの共有対策を講じることができればと願っています。
( ↓ 筑紫医師会館内での交流会の一場面)
今回のテーマは「ACP=意思決定支援に関すること」と伺っています。
筑紫医師会立訪問看護ステーションでは月10件程度終末期の方への訪問、そのうち3分の2の在宅看取りを支援させていただいております。その中で記憶に新しい体験を紹介いたします。
S状結腸がん術後・多発肝転移術後の47歳の女性です。6月初旬自宅退院希望と大学病院から連絡があり退院前カンファレンス予定も、2転・3転と退院が延期され、20日後主治医・副主治医に付き添われ自宅退院となりました。在宅酸素7Lオキシマイザー+7Lリザーバーマスク投与状態での帰宅です。嘔吐や心窩部痛が続き油断できない状況でした。ご夫婦には子供が無く、お互いの親戚とは疎遠。ただただ仲良しご夫妻のようでした。しかし妻の病状は悪化の一途を辿り、在宅医師・看護師は夜中頻回に訪問し苦痛緩和を図りましたが、翌日には甲斐なく帰らぬ人となりました。そして一晩中苦しむ妻を看た夫から「退院させたのが間違いだったのかな」との吐露する言葉が聞かれました。そこで夫の想いを伺ったところ「2~3日の命とは聞いていた。本人への告知はない。本人は早く家での生活に戻りたがっていた」。そして夫は「家に帰れば少し延命できるかもしれないと勝手な期待があった」「夫婦になって20年、結婚式を挙げていない。妻はウエディングドレス姿に憧れていた」との内情を聞き、失礼かとは思いはしたものの、「ウエディングドレスを着せて花嫁姿をさせませんか」と提案しました。夫は喜々として了承され、翌日、ウエディングドレスの花嫁姿を夫へ見せることができました。ベールとブーケを持つ花嫁姿と蝶ネクタイの花婿姿。入院療養した大学病院のNSやSW、ケアマネジャーが自宅に駆けつけてくれ、感極まった時間を共有させていただきました。僅か27時間の在宅時間でしたが、正装姿の写真を見た在宅医師は「これで良かったんだよ。このために退院したかもしれないね」と安堵する言葉かけもありました。その後、夫は事あることに当事業所へ顔出しされます。最近お墓を購入したそうです。「お墓探しは 生前の妻と新居探ししたことと同じですね」と照れながら報告を頂きました。
ACPとは、何かを決めようとする事ばかりではなく、思いを聞くことに集中する事から、ACPの実現に繋がることの大切さを痛感した関わりでした。
以上
(ご家族の了解を得ての写真提供です)