ドクター&ナースのつぶやき
令和6年11月号
八幡医師会における在宅医療への取り組み
医療法人野田医院 理事長
北九州市八幡医師会 会長
西田英一
この度、福岡県訪問看護ステーション連絡協議会副会長に就任しました、八幡医師会の西田です。
八幡医師会は、1917年に八幡市医師会として設立され、1963年の北九州市誕生に伴い、北九州市八幡医師会として活動を続けてまいりました。以来、100年以上にわたり、地域医療と住民の健康を守る使命を果たしてきました。現在、約560名の医師会員が集い、健康診断やワクチン接種、夜間休日急患センターでの診療、介護認定審査会への参加、学校医や産業医、市民センターの顧問医などを務め、地域医療の発展と市民の健康向上に貢献しています。また、八幡医師会は、医療・福祉センター、在宅医療・介護連携支援センター、看護専門学院など、さまざまな事業を展開し、地域の医療・福祉の充実に力を注いでいます。
八幡地区は特に高齢化が進んでいる地域です。地域住民が高齢になっても、または障害を持っていても、住み慣れた八幡の町で安心して暮らせるように、地域包括ケアシステムの構築を推進しています。2016年には、在宅医療に関する知識や経験を深め、在宅医療に取り組む医師を増やす目的で「八幡在宅医会」を設立しました。医師のみならず、訪問看護師やケアマネージャー、病院の連携室など多職種の方々にも参加していただき、毎月勉強会を開催しています。
さらに、2023年からは、八幡東区および西区を地域包括支援センターの圏域に応じた8つの圏域に分け、それぞれの圏域で医師、歯科医師、薬剤師、看護師、ケアマネージャー、リハビリ職、介護職、管理栄養士などの専門職がチームを組みました。各圏域では、地域の特色に合わせた勉強会や情報交換会を定期的に開催し、顔の見える関係を築いています。地域で課題が発生した際には、多職種が知恵を出し合い、地域の支援者や行政とも積極的に連携して解決に取り組んでいます。2024年からは、福岡県の補助金を活用して「在宅医療推進協議会」を設置し、各圏域のリーダーを選任してもらい、情報や課題、支援方法を共有することで、すべての圏域で質の高い在宅医療の提供を目指しています。
今後、八幡医師会では、患者さんが地域のどの病院に入院しても、病院から在宅療養への切れ目のない支援が受けられるよう「地域医療推進協議会」を設立します。これまでは、在宅療養中の患者さんが入院すると支援が中断され、退院後に十分な連携がないまま療養生活が脅かされることが多く見られました。これを解決するために、病院内の多職種と在宅側の多職種が情報共有と連携を強化し、地域連携マニュアルを作成することを目指しています。
さらに、来年4月には「医師会立在宅診療所」を設立予定です。かかりつけ患者が通院できなくなった際、かかりつけ医がそのまま訪問診療で診ることが、患者にとって最も望ましい形です。しかし実際には、在宅医療に対応していない、あるいは麻薬管理や看取りが難しいと感じる医師も多いと思われます。そこで、医師会の先生方の負担を軽減し、最後の砦となる診療所の必要性を感じました。また、大学や病院勤務では在宅医療を学ぶ機会が少ないため、今後のかかりつけ医を目指す先生方にも在宅医療を学ぶ場を提供します。
八幡医師会は、今後も質の高い在宅医療の体制を構築し、地域の皆様が住み慣れた八幡の地で安心して暮らせる社会の実現を目指しています。皆様のご協力を賜りますよう、どうぞよろしくお願いいたします。