ドクター&ナースのつぶやき
令和5年11月号
医療的ケア児の訪問看護
大牟田医師会訪問看護ステーション
管理者 田中 千香
大牟田医師会訪問看護ステーションは福岡県の最南端にある昔からあるステーションです。1歳から101歳まので利用者を職員12名で運営しています。小児の訪問は現在3名で、それぞれ14歳11歳1歳で、1歳の小児以外は10年以上関わっています。
長い経過をたどる医療的ケア児の訪問看護。最近では家族全員を含む看護の支援を実感します。当然ながら児は体重が増え心身ともに成長しています。その間に家族(兄弟)が増え、入学、卒業、引っ越しもあり、看護師も当然ながら家族イベントにも関わり児と共に日々成長しているつもりです。
そして最近始まった0歳児の訪問看護ですが、久しぶりの赤ちゃんでしたが、14歳のD君を10年関わった経験値もありスタッフも過度なストレスなく導入が出来ました。10年ひと昔とは言いますが、育児が変わるようにSNSが発達し10年前では考えられない、ママ達はSNSで「医ケア児」で検索しリアルタイムで交流している事に驚きました。
エピソードがあります。訪問看護導入時に人工呼吸器のトラブルがあり訪問看護師へ連絡し到着を待つ時間より返信の早いママ友も頼りがいがあると言われ苦笑いしながら支援しています。それ以来オンコールはありません。
ネットで検索をすれば医療的ケア児がイキイキと生活しています。昔は家の中の隅っこに居た障害をもった子供達が満面の笑顔で親の愛情を受けている写真がアップされています。しかし全てが良いと言うわけでもない現実もあります。膨大な情報を整理し責任をもって行動することも大切です。
多様な価値観や地域包括ケアシステムでの本人・家族の思いに向き合う事は訪問看護師だけでは成立せず枠組みを超えた柔軟な対応が必要かと思われます。雑誌をみると、訪問保育というお仕事もあり医療的ケア児が自宅で保育のサービスを受けられるようです。都会はありますが、大牟田市にはベビーシッターの事業所はありません。今後に期待したいものです。
最後に今までは介護負担軽減の方向ばかりの発言ですが、1歳児のNちゃんへの訪問看護では抱っこを実施しています。下肢の緊張が強いNちゃんですが、抱っこ後は緊張が和らぎなんとなく柔和な表情になるような気がします。これはママも実感しており、呼吸器下臥床が多いので「時間が空いた時に抱っこをする」と言ってくれました。この言葉がとってもうれしくて感動しました。
Nちゃんにとっては医療的ケア児の実感はなく普通の日常を送っていると考えると、そう特別な事することもなくNちゃんの成長を家族と一緒に見守りつつ、ネット社会の令和の時代にはそぐわない看護の原点の支援に専念したいと思います。