ドクター&ナースのつぶやき
令和4年11月号
病院から在宅を看て
~42年間の看護師生活を振り返って~
訪問看護ステーションすいせん 河野ゆかり
私がまさか!このようなものを書く事になるとは思いませんでした。
私は今年還暦を迎えまして、今までの思い出話をつぶやかせていただいてもよろしいでしょうか?
看護師の仕事に携さわらせていただいてなんと!42年‼、在宅での勤務をさせていただくようにはなって4年が経過いたしました。
私が20年前に急性期病棟の管理者をしていた時は正直に申しまして、在院日数などに気を取られ、治療の指示を間違いなく、安全に早く退院していただく事を目標にケアしておりました。患者さんや家族への対応ははもちろんですが、スタッフは退院サマリーに追われ、入院と退院調整と多忙、繁雑な日々を過ごしていました。それでもまだ若かったし、スタッフも私も楽しかったです。
平成26年ごろより地域包括病棟が新設され、私もその病棟を任され、その時は急性期病棟から移動して来られる患者さん、家族の不安の軽減、日常生活動作の向上を目標にスタッフと話し合い、取り組みました。少しでも患者さん、家族の気持ちを理解しようと、面談やカンファレンスを重ねたことを思い出します。
その後、療養病棟に移動して、末期癌の患者さんや医療依存度が高い患者さんが多く、長期にわたり入院しておられる方や、病院で亡くなっていかれる患者さんに対し、可能な限りすみ慣れた場所、または四季や行事が感じられる場所(そんな施設)に帰してあげたいと思い悩んだこともありました。それでも、スタッフとできる限りで“プラス愛!”を目標にケアのひとつひとつに言葉や見つめるやさする等プラスすることの取り組みを行いました。
そして、4年前に訪問看護ステーションでの勤務となりました。
病院を退院された患者さんには、医療の継続と生活の質を守るための介護や予防を必要とされる方がおられます。治すのも悪化しないようにするのも私たち関わる多職種が力を合わせることが必要で、私たち訪問看護師は治療やケア、生活や介護の状態の両方を見ることができる職種です。私は大切にしていることとして、利用者やその家族が少しでも笑顔で生活できるようにてきればと思っております。障害がある方には安楽なケア、不安な人には寄り添って、できる限り健やかに暮らしていただきたいと願っております。
しかし、そんな利用者さんばかりではありません。末期癌のような、終末期や経過の不安定な状態をケアする時は緊張が走ります。利用者に安心してもらう為には、安心できる返事や技術が一番です。スピード感のある返答や対応が必要であり、一人で訪問する私たちには心配はつきものです。
そんな中、平成27年10月よりチーム医療を促進し、看護師が役割を発揮できるようにと特定行為に係る看護師の研修制度が創設されました。当院では平成29年より特定行為研修指定研修機関となり研修を開始し、数名の修了生を出しています。当ステーションにおいても、修了者や現在受講中のスタッフがおります。この人財を大切にして、彼らが勉強したことを活かし、もっとリーダーシップを発揮できるよう、教育部次長の支援のもと環境を整えていきたいと思います。ありがたいことです。
しかし、何と言っても力になっているのは私たちプラチナチナースであることも忘れてはなりません。看取りの現場となれば、年の功、経験値が優ってまいります。人生経験の多い年配者の寄り添いかたや、言葉のかけ方は安心感を与えていることでしょう。
先日11月12日に今年で30回になりますホスピスを語る会、介護者交流会を開催することができました。介護者の方の表彰、スタッフでチャレンジしたカリンバ演奏、参加していただいた方々にはお土産として手作りのリースをプレゼントしました。
コロナ禍によって3年ぶりの開催となりましたが、お越しいただいたご家族には、「訪問看護師さんに来て頂いて安心しました」「訪問看護師さんのおかげで家で看取ることができました」などたくさんの感謝の言葉や勇気をいただきました。みんな感動していました。
先輩方やスタッフに助けられて、何とか続けられてきた看護師生活も終盤を迎えてきた私にとって、このような気持ちの整理できるチャンスをいただき感謝申し上げます。今までやってきたことの確認をさせていただき、あと少し私が何をやらなければならないか課題が明確となりました。今、高齢化が急速に進む中、住み慣れた地域で人生の最後まで自分らしく生活できるよういろんな取り組みがなされています。私たちも少しでも力を発揮できるように努力していきたいと考えております。私も、もう少しナースの仕事を楽しもうと思います。