ドクター&ナースのつぶやき
令和4年9月号
これからの訪問看護の在り方について
嘉麻赤十字訪問看護ステーション 森山 英美
嘉麻赤十字訪問看護ステーションの森山と申します。
当事業所は、嘉麻赤十字病院の併設の訪問看護ステーションとして平成12年に開設されました。病院の在宅部門には他に、居宅介護支援、通所リハビリテーション、定期巡回・随時対応型訪問介護看護の3つの事業所があり、計4事業所がワンフロアで顔の見える連携を強みに、日々ご利用者様の在宅療養支援に努めています。
設置地域の嘉麻市は、超高齢化が進んだ高齢化が40%を越える地域です。嘉麻市・飯塚市・田川市・田川郡・桂川町の30分園内を訪問エリアとし、訪問看護師6名とセラピスト2名で活動しています。定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所は、訪問看護一体型であり、訪問看護師は二つの事業所を兼務しています。
私自身は、16年前に訪問看護ステーションに配属され、途中病棟勤務を経験し、9年前より訪問看護ステーションに勤務しています。その中で、利用者像やその背景は様変わりしました。認知症独居や夫婦とも認知症と診断を受けた方、寝たきりで介護度が高い方、癌末期の高齢者、就労されているご家族の介護負担感が大きい方、家族が遠方でインフォーマルな支援がない方、在宅での看取りを希望される方が増加しています。また、コロナ渦の影響は否めず、入院中は面会ができないからと退院を決断されるご家族も少なくありません。交通手段が乏しく、商店等も少ない地域であり、買い物難民・受診難民の問題が深刻です。この現状で、地域に必要とされているのは、第一は、「生活支援」です。介護の力は絶大です。その中で、訪問看護の役割や看護師は地域でどのように動くべきか見つめ直すことも重要なことだと思います。介護といかに協働していくか、ご利用者様の在宅生活の継続の鍵になると実感しています。
在宅看護では、疾患を看護の視点でみて、生活過程を整えることが大切であると考えます。訪問看護師は、「医療と介護」そして「医療と地域(ご利用者、家族)」を繋ぐ役割を担っています。疾患からくる生活上の留意点、ケアの方法を介護・地域と情報共有し、それを生活にどう組み込むかを一緒に考え協働します。対象の疾患と生活を知り、何の支援が必要かを導き出し、多職種に働きかけることができるのは訪問看護しかできない仕事だと思います。これからは、私たち訪問看護師が更に看護の専門性を発揮し、ご利用者様の「生活をケアする」ことに努めていくことで、地域の中で、生き生きと希望する場所で生活できる方が一人でも増えることを願っています。