ドクター&ナースのつぶやき
令和6年3月号
在宅看取りで大切にしていること
訪問看護ステーションみやま
管理者 堀下 友行
みやま市は県南に位置し、人口約36,000人で農業が盛んな自然豊かな場所です。高齢化率は39.3%(R5.10時点)と県内でも上位です。同市のほぼ中心部に当事業所があります。
今回、“在宅の看取り”についてお題をいただきましたので、当事業所が在宅看取りで大切にしていることをお伝えしたいと思います。
まず、当事業所の在宅看取りにおける統計を示します。R4 年8月~R5年7月における当事業所の在宅看取り件数は26件です。うち、約9割は悪性腫瘍の方で、年齢層も75歳以上の後期高齢者が約8割を占めています。これは、みやま市の人口構成を反映 したものになっています。非がんの方が少ない要因は様々ですが、介護保険制度が一因と考えています。非がんの方も在宅で安心して看取れる体制(連携)・システム作り、すなわち地域包括ケアシステムのさらなる推進が望まれます。
私たちが在宅看取りで大切にしていることは、①本人の意思を尊重し最善を目指す,②Care≧Cureで組み立てる,③家族や支援者の声に耳を傾けCareに反映することです(あくまでも一つの考え方です)。本人・家族・医師・介護支援専門員・時に知人などを交えて、ACPを繰り返します。ここで課題が生まれます。大きな壁は医療者側の対応の限界と経験、家族(本人も含む)の不安であると考えています。例えば、PCAが効果的と判断される方がいたとします。PCAが使用できる医療機関が限られています。もしかしたら利用者は最善の緩和医療を受けることができていない可能性があります。例えば、倦怠感が強い方がいたとします。倦怠感の原因を適切にアセスメントすることができ、在宅という環境が倦怠感の閾値を高める可能性があると考えより良い環境を支援者で整え、必要性に応じてマッサージ,緩和リハなどCareを提供できるとします。利用者からしたらできない事業所よりできる事業所を選ぶでしょう。例えば、状態が変化していく当事者を看ている家族が不安を抱いたとします。精神的ケアを適切に受けることができる、今後の見通しについて説明を受けることができるとします。揺れながらも在宅での看取りを覚悟できるでしょう。このように、私たちは“その時”を逃さず、常に寄り添ったCareができるように 準備しておく必要があります。
みなさんは、在宅看取り(看護)で大切にしていることはなんでしょうか?
在宅でお看取りをした方の娘さんが、私をモデルに絵本を描いてくれました。
“言葉”は良薬にも悪薬にもなると思います。
ためいきリフレッシュ 作者:YURICA 出版社:ニコモ (2023/9/19)