ドクター&ナースのつぶやき

 

平成28年1月号

訪問看護で思う事
 -在宅医療推進の流れを受けてー


手島内科医院
院長 手島久文

 ここ数年医療・介護業界では「地域包括ケア」という言葉の大合唱、在宅医療推進に向けて病診連携を進め、在宅医の量と質両方での向上が叫ばれています。
 しかし言うのは簡単ですが行うのはとても大変。高齢者の増加率を考えるとこれから在宅医療を始める医師がたくさん必要となります。その中にはまだ慣れていない医師も含まれると予想されその負担はどこに行くか? 多分CMと訪問看護に行くような気がします。
 もちろん医師が単純に訪問診療するだけという原始的な形もありますが現在の医療では自宅をミニ病棟化する事ができ、要求もされます。在宅酸素、胃瘻、褥瘡処置、バルーン留置、腹膜透析、人工呼吸器管理、中心静脈栄養管理、PCAポンプなどなど。驚く事はこれらに全て対応出来る医師はかなり少ないのですが全て出来る訪問看護師は結構いらっしゃる事です。正直、訪問看護の協力がないと維持出来ない医療がたくさんあり、医師と訪問看護師は在宅医療推進の両輪であるといっても過言ではありません。もちろん各々の医療機関・事業所共にそのレベルや志は様々ですがお互いに切磋琢磨していく事が大切です。ただ人によって(老衰など)は「何もしない勇気」という考え方も医療と訪問看護で共有できたらと思います。

今回のお題は「最近感じている事」について何でも良いという事ですのでちょっと納得いかない事を含め少し雑多に書かせて頂きます。

1.夜間対応をしない訪問看護ステーション

#事例1.
 とても重症な方の訪問診療を依頼され、患者さん宅で訪問看護の方と話すと夜間・休日対応はできないとの事、びっくりしてCMに「何故お願いしたか」を問い合わせてみると大病院に勤めていた方が呼吸リハを前面に打ち出してステーションを開設したので総合病院から紹介されたとの事、看護レベルもお話にもならず、即日事業所交代、CMには今後よく考えて事業所を選ぶ様お話ししました。ちなみに食事もとれていなかったのでその後週2回訪問診療と週3回の訪問看護を組み合わせ、点滴を数か月続ける事となりました。

#事例2.
 元々入院していた病院の訪問看護―癌の方の訪問で状態悪化すると他のステーションに丸投げする。私は24時間対応をしない事業所は進行した癌患者を診るべきではないと思います。

#事例3.
 1人暮らしの終末期癌の方で入院拒否、毎日の様に昼間訪問するも夜間対応出来ないため夜間自宅で死亡。何故私が知ったかというと翌日午前3時頃、死体検案で呼ばれたから。(もちろん知らない方です)

 私個人としては退院時に患者・家族の強い希望などよほどの事がない限り、24時間対応の訪問看護事業所以外には依頼しません。特に困難事例で複数の訪問看護ステーションが組む場合では同じ条件が大前提になります。

2.「水は濁る」
 医療機関のグループ内でCM・デイ・訪看・訪リハなどを行うとどうしても馴れあいが増え、グループ内の利益循環になりやすくなります。
 医療機関とCMと訪問看護が全て同じ経営母体という形は避けるべきでしょう。水は濁ると臭くなります。やはりかき混ぜないといけません。

3.今後の医療政策をかんがえると・・・・・
 現在行われている「病床機能評価制度」はいろんな見方はあるでしょうが目標は社会保障費の削減であり、この10年間で総病床数は減る方向にあります。特に現在の7対1病床は確実に減少、要は高度急性期―急性期―回復期―慢性期病床をトコロテンの様に絞っていき、最終的には施設や地域(つまり在宅)に行き着く。つまり看護師の勤務場所が7対1病棟中心から13対1、15対1病棟や施設・地域にシフトしていくという事です。もしかしたら1部の病床は廃床し、施設に転換という事になるかもしれません。ですから現在病院勤務の方々も今後施設看護や在宅看護を学ぶという選択肢も考えられたほうが良い様な気がします。ただこの文章は訪問看護に関わる方中心に見られるわけですのでいろんな考え方をどうやって広く伝えていくかが問題です。

 この文章を読まれて「イラッ」と感じられる方もいらっしゃるかもしれません。しかし医療と同じ様に訪問看護に関わる方の数も質も上げなければいけないというのは確かです。お互いに向上しあう必要があり、出来ない医療機関や事業所は在宅医療の中では自然淘汰されていくべきだと感じます。

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