ドクター&ナースのつぶやき
令和3年6月号
コロナ禍における久留米包括ケアシステム(KICS)の活用
久留米医師会
むた ほとめき クリニック
院長 牟田 文彦
新型コロナウィルスの感染が福岡県南部で急拡大し、私のクリニックでも4月上旬より熱発者外来において新規感染者が多く認められました。久留米市では人口10万人あたりの感染者数が福岡市を超え、大阪の2倍、東京の4倍に達しました。県内においても感染者数が五百人を超える日々が続き、病床使用率が80%近くになり医療が逼迫している状況で、医療現場に不安が広がっています。管轄保健所も新規感染者の対応に追われる中、関西では自宅療養中の患者が急変し亡くなるといったケースがあり、管理する行政の責任が問われる状況です。病床、療養施設にも限りがあり、患者にも様々な理由があり自宅療養となることがありますが、この様な患者を地域医療で管理観察はできないでしょうか。
久留米医師会では平成30年度より令和2年度の3年間にわたり、福岡県在宅医療提供体制充実事業として、久留米包括ケアシステム(Kurume Integrated Care System : KICS)を構築しています。これまで在宅医療充実強化のルールとして、まず「退院調整ルール」は久留米市が介護を必要とする患者が退院する際に、医療機関と居宅介護支援専門員(ケアマネジャー)等の関係者間で必要な情報を共有し、安心して在宅療養生活が送れるルールを作成・運用しています。また、「アザレアネット」を利用し検査、処方、画像などの診療情報を、医療機関同士が共有し、地域医療の強化を行っています。一方で、「入院ルール」は、病状悪化、検査や治療のための入院が必要な時に、患者情報を入院支援病院に事前に提供する「とびうめネット」を利用して、入院支援を行なっています。次いで「バックアップルール」は、患者情報を多職種で共有できるシステム「とびうめネット多職種連携」を利用し、かかりつけ医、訪問看護、三地区中核病院(古賀病院21、くるめ総合病院、久留米大学病院医療センター)がグループを形成し、かかりつけ医が対応できない際の在宅での急変時の入院や看取りを希望する患者・家族の支援を行います。KICSでは、この3つのルール(入院ルール・バックアップルール・退院調整ルール)をICT(とびうめネット・とびうめネット多職種連携・アザレアネット)を利用して、患者情報を共有し、多職種(医療機関、歯科・訪問看護・薬局)で連携しています。
KICSは在宅医療の充実強化を目的に構築したシステムです。私は、このKICSをコロナ感染自宅療養者に利用し、多職種(医師、看護師、保健所)でICTを利用し管理観察が可能だと思います。もちろんそのためには、医療者がワクチン接種を済ませておくことが前提です。管轄保健所の指示のもとに、かかりつけ医(訪問診療、往診に携われる医師)、訪問看護師が自宅療養中の患者の往診診療を行い、早期に患者変化を診断し入院に繋げ、また、逆に症状改善し退院した患者に対しても同様にKICSルールを使いリハビリ療養に繋げる事が可能となります。これにより保健所のオーバーワーク、病床逼迫、医療崩壊を防止出来るのではないでしょうか。第4波の猛憂により、かかりつけ医、訪問看護師に対する期待が大きくなっています。今後の感染拡大にICTを利用し、より我々は連携を深め、未曾有の感染症との戦いに勝利しましょう。
〒830-0037 久留米市諏訪野町2363-1
むた ほとめきクリニック
TEL:0942-46-0909