福岡県医師会共通基準範囲の変更

福岡県医師会共通基準範囲とは

 福岡県医師会は医療機関(健診機関を含む)間での患者の検査情報の共有化を計るため、1995年にCLSI(旧NCCLS)のガイドラインに準拠した、共通基準範囲を発表しました。これは福岡県五病院会により作成され、これまで臨床検査精度管理委員会、解析委員(臨床検査技師)及び関係各位の御協力により、県下医療施設での臨床化学25項目の施設間差是正のために役立てられてきました。

変更に至った経緯

 全国に先駆けた共通基準範囲でしたが、他の都道府県においても同様な試みで基準範囲が示されるようになり、また体外診断薬メーカー、大手衛生検査所、教科書等でもそれぞれが独自の基準範囲を記載しております。このように臨床の現場には複数の基準範囲が混在し、未だに日本国内共通の基準範囲というものはないという状態です。
そこで2014年3月に日本国内の診療の場で使用できる共用基準範囲が日本医師会の賛同を得てJCCLS(日本臨床検査標準協議会)から公開されたのを機に、福岡県医師会は福岡県共通基準範囲としてこれを採用することを決定し、2014年7月に公表致しました(福県医発第1183号(地)平成26年7月24日)。

検査結果の施設間差是正のために

 全国で共用できる基準範囲となったこともあり、これまで福岡県医師会共通基準範囲を使用してこられなかった施設においても これを機に基準範囲を共有していただきたいと切望する次第です。本件についてご了知いただき、本会精度管理調査と合わせて検査結果の施設間差是正に役立てていただきたいと期待しております。

平成27年2月
福岡県医師会
松田 峻一良

福岡県医師会共通基準範囲

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臨床判断値(予防医学基準値等)を付記する項目

臨床判断値(予防医学基準値等)を付記する項目の一覧

新しい基準範囲の特徴

  • (1)リソース:3種類の大規模な基準個体検査値データ(日本臨床衛生検査技師会、IFCC市原プロジェクト、福岡県五病院会)をもとにしています。これら3つのプロジェクトはいずれも基準範囲作成のために同意書・問診書を取った基準個体から得られた、標準化または標準対応された測定方法によるデータを元に、明確な一次除外基準に加え、脂質異常症、糖尿病、貧血、アルコール性肝障害など、潜在病態を除外するための二次除外基準を設けて基準範囲設定値を最適化しています。
  • (2)項目の拡大
    従来の臨床化学25項目に加え、血算、免疫項目の一部を加え40項目となっています。
  • (3)臨床判断値との違いの明確化
    基準範囲は健常者の測定値分布の中央95%の区間であり測定値を解釈する際の目安となる値です。それに対し臨床判断値(予防医学基準値など)は特定の病態(動脈硬化性疾患、内臓脂肪症候群など)に対して診断基準としてや予防医学的な観点から早期介入の目安として設定された値です。この臨床判断値が基準範囲に混入していることがしばしば誤解のもとになっていました。臨床判断値は疫学的研究等に裏打ちされた、ある特定の病態には意味がある数値であるが、その特定な病態以外においては使用されることが想定されていない数値です。これまでの共通基準範囲表では一部項目で臨床判断値が基準範囲に代わって採用されていました。新共通基準範囲の採用は臨床判断値の利用を決して制限するものではありませんが、健常者の測定値分布幅としての基準範囲と区別を明確にするために、臨床判断値(予防医学基準値等)を付記する項目として別記しています。
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